文を書いて思う事

  歯医者を引退し、社会との人間関係のつながりが大変に薄くなり、自分が社会人としての義務と言うか社会性のある行動というものに不足を感じ始めるのに一年とかかりませんでした。人は常に人と係わり合いながら、自らを育て上げていくわけですから、一番重要なのは人間関係である事は申し上げるまでもない事です。

  今日の自分が有りますのも多くの人に育てられての事である事は前にも申し上げ、その代表的な方の話は致しました。先輩の恩は後輩に返せではないですが、多少なりとも若者の役に立つ事を積極的に考えながらも、あせらずじっくりと取り組む事を模索したわけです。

  若者の生活範囲の中に飛び込むことがベターと考えコンピューターの世界に入り込む事を決心したわけです。私は話をする事は得意でしたが、文章を書いた経験も無くましてやワープロなどという物に触れた事も無ければ、キーボードなどというものをたたくなどという事を考えた事すらない男でした。(ビデオもその場で録画再生ができるぐらいで、それ以上はダメです)

  音声入力という機械があると聞いてそういった道具を一式取り揃えてもらい、技術者に一つ一つ教えてもらいながらも、あくまで自分で操作し悪戦苦闘しながら始めたわけです。私がテープに録音しこれをHPに出す事を人に頼んでも、それだけだったらすんだかも知れません、でもそれだったらHP以上の発展はしなかったわけです。

  人を頼まず自分でおこなった結果、文章も幼稚で誤字の多い大変に読みにくい事になってしまいましたが、それはそれで未熟なりに素直に自分の心が表現できたと思います。しかしながら表現能力の未熟さから十分に思ったことが表せず、書き直したいと思う事も今はたくさん有りますが、これも自分の通った道のような気がしてそのままにしてあります。いずれ書き足そうとは思っていますが。

  HPを作ってはみたものの誰にも読んでもらえません。今思えば当然の事ですが、知らないという事は恐ろしい事です、公表すればすぐに読んでもらえる事だと思っていたのですから。それで営業活動が始まったわけです。色んなところにアクセスしているうちに、私たちが若かった頃雑誌の文通仲間を求めるというコーナーがあったのですが、それと同じようなものであろうと思いメール仲間を求めるといったコーナーに公表したのです。

  このコーナーからの反響は大変なものがありました。最年少は小学6年の方から70代の方まで年代には大変な開きがありました。ここでのメールのやり取りが私のキーボードという物の操作能力を大変な勢いで上達させてくれ、すぐに音声入力の器械は必要なくなりました。人間、必要という事と面白いという事のエネルギーは大変なものだと、あらためて自ら学んだ次第です。

  私は女性との交際がはなはだ少なかったために、自分の生き方を非常に狭くしたという思いが強いために、知識がはなはだしく少ない事は承知の上で、多少はいろどりを添える意味でも文にしたのですが、反響があったのは男女間の事に関する意見がほとんどでした。

  文章というものを書いて思ったのですが、経験のないものはなかなかかけないと言う事です。プロになれば少しの経験を大きく脚色し、膨らませて書く事はできるのかも知れませんが、私のような素人には通ってきた道とそこから発想される考えを述べるにとどまるような気がします。

  逆に言えば自分の経験した事は全ての人が文章を書けるという事だと思います。ですから男女間の事に関しては全ての人が経験し、何がしかの意見を持ったそれぞれのプロとしての自覚を持っているように思えます。男と女に関する小説は全ての人が書けるのだなあと言うのが実感です、特に女性の文章は面白いだろうなあと思います。これは私が男だからかもしれませんが。

  私の幼い男女間の知識に、はがゆく思われたのだろうと思うのですが、多くの女性から色んな意見を頂きました。特に40代以上の方からの教えは大変な知識となり、あらためて人生というものを考えさせられた次第です。

  私は今までに経験した知識や知恵と言ったものを、多少なりと若者に伝達したいと思い、ボランティァのつもりで始めたHPだったのですが、逆に多くの知識を頂き教えるどころか教わる結果になりました。人生とは心から人のために何かをやろうとすると、結局は自分のためにやっている事になるのだなあと、あらためて感じているというのが本音です。

  このメール仲間のいうのは不思議な感じがします。現実的な社会現象の部分、たとえば職業とか身分とか住所とかは、人によっては嘘があるように思います。が、心の事に関しては全ての人が正直になるような気がするのです。人は元来正直にありたいと皆思っているように思えます、ただ現実に顔をみてしまうと色々な思惑が起こり、より正直に振舞えない現象が起こるのでしょう。その点メールは相手がわからないと言う点で嘘をつく必要がより少ないために、そういった現象が起こるような気がします。特に心に関しては正直になるのでしょう。

  40代以上の女性からの赤裸々な感情を知らされ、心の動きを細かく教えられた事は、私の大変な財産になりました。何人もの女性と長い事一緒に暮らしたような知識や知恵を頂くと同時に、これからの生き方にも大変な影響を与えて頂いたように思います。きっとこれからHPに書いていく事になるでしょうが。

  私も含めてですが、多くの人が自分の知識なり知恵なりを人に伝えたい、教えてあげたいという気持ちをもっているのだという事も新たな発見でした。メールを始めたばかりの頃はかなり罵倒され意地悪をされたのですが、これもなれてくるともうありません。そういった人も結局のところ少数派でどこの社会でもいる秩序を乱す人達で、テレビのニースなどに出てくる法を犯して裁かれる人達となんら変わらないのだというのが実感です。

  文章を書くという新たな事柄への挑戦をして半年ちょっとですが、大変な変化をする結果となりました。自分では想像の出来ない経過です。未知の世界に行動するという事はまず恥を書くという事が大前提にあるような気がしますが、それをしのぐ勇気さえあればこんなに面白い事もないような気がします。今回はたまたま上手くいったからかも知れませんが。

  私は話をする事は好きで、また得意でもありましたが、漢字を書けないために辞書を片手でないと文が書けなかったという事柄も苦手な原因の一つであったろうと思います。ワープロという便利な器械のおかげでそういったわずらわしさからも開放され事も大きな一因だったと思います。

  文章を書くという趣味もなかなか楽しいいいものだと思えるようになってきました。年をとりあまり体が利かなくなってからでも、この趣味は続けられるという利点もあります。また常に社会との接点も持てるという心の潤いにもつながる楽しさもきっと持てるでしょう。そして見ず知らずの人達がちょっと立ち寄って何がしかの心の安らぎを得られたら、こんなに嬉しい事はありません。

これからも媚びる事なく、気取る事なく、楽しい時も寂しい時も心のままに、色んな方面から偏る事なく自分の気持ちを文章に表していけたら「幸せ」と思っています。

 


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