これはまさしく失敗談です。
27歳の春(1973年)頃から、歯医者の開業の準備を始めました。お金は全く有りませんでしたが、当時は歯医者が開業するというだけで、銀行がお金を貸してくれました。そう言う意味では良き時代だったと思います。6月頃は経済も好調で銀行は二つ返事で開業資金を出してくれる約束をしてくれていたのです。ところが9月に1回目のオイルショックが起こり、トイレットぺーパーのなどの不足をもたらした、大騒ぎが起きたのです。
当時、経済に疎かった私はそんな事には関係なく話を進め、10月に開業場所を見つけ銀行に話した所、今までの約束がすべてほごになり、何にも実行してもらえませんでした。今ならそれも当然だと判断できますが、当時の私には銀行ともあろう者が約束をほごにするなんて許せん、という憤りしかありませんでした。配水管のビニールパイプなども不足し毎日値上がりするという混乱の中、それでも意地になって2月に開業する運びになりました。当然の事ながら資金不足になったわけです、そんな中でも2月3月の2ヶ月分の運転資金は確保したのです。
しかしながら2月3月はほとんど患者さんはありませんでした、4月に入ると従業員の給料も家賃のお金も無いのです、その上患者さんも無く暇なのですからなおストレスが溜まっていたのでしょう、つまらない事で従業員の給料を値切ろうとしたんですね、一万円に満たない額だったと思います、自分でも理解できませんがやはりそれだけ追いつめられていたのでしょう。私を慕って付いて来てくれた衛生士を失いました、馬鹿な事をしたものです。
4月10日頃から突然と患者さんが多くなり、毎日の収入で何とか4月を乗り切る事が出来ました。以来3年間この地で治療をしましたが、自分の目指した診療所には出来ずに閉院しました。
患者さんには申し訳なかったと思っています。
この3年間は悔いの残ることが数多くあります、おいおいと失敗談として述べていくつもりです。
40歳で事業を始めてからは、何度かお金に追いつめられた事がありますが、20代にわずかなお金で自分が変わった事を忘れたことはありません。
銭は人(自分)を変えるもんだという事を肝に銘じて。その後その様な事は無いつもりでいます、まあ一人よがりかもしれませんが。